「ね、慎也」
前を向きながら、少し後ろで歩いているはずの彼へ声をかける。
けどなかなか返事がないから、不安になって振り返った。
「慎也?」
「……え、あっ、なに?」
慎也はハッとして、すぐに苦笑いを浮かべる。
…なんだか最近、よく上の空だなぁ。
どうしたのかな、また利乃のことで悩んでるのかな。
補習の日以来、利乃とはメールのやりとりはしてるけど、会ってない。
トモとも、同じ。
…また四人で、遊びたいんだけど。
そういうわけにも、いかないんだろうか。
「…もうすぐ、夏休みが終わるね」
人通りの少ない道を、後ろ向きに歩く。
数時間前に降った、小降りの雨でできた水たまりがパシャンと跳ねた。
あたしたちを囲うように立ち並ぶ木々が、コンクリートに影を落とす。
それはときおりさわさわと風に揺れて、形を変えた。
「……そうだね」
慎也は木々を見上げて、目を細める。
あたしはその姿を見つめながら、「ねえ」と言った。



