自分の部屋へ戻ると、課題もやらずにベッドへもぐった。
それからしばらく、私はシーツの上でゴロゴロと寝返りを打っていたけど。
…眠れなくて落ち着かなくて、起き上がった。
空はもう真っ暗で、時計を見ると十二時を過ぎた頃だった。
「…………」
おもむろにベッドからおりて、部屋を出る。
ぼうっとする意識のなか、階段をおりた。
……リビング、電気ついてる。
お母さん、まだ起きてるのかな。
何か飲もうかなと思い、リビングの扉を開けた。
視界に飛び込んでくる、照明の明るさ。
その下で、イスに座るお母さん。
テーブルで家計簿をつけるその姿は、水商売なんかとは縁のない、普通の『母親』のようで。
…私は、目を細めた。
何も言わずに台所へ行き、冷蔵庫を開ける。
お茶のペットボトルを取り出したとき、テーブルの方から声がした。
「…どうしたの。眠れないの?」
家計簿から目を離さず、お母さんは化粧を落とした素顔で口を動かす。
私はパタンと冷蔵庫を閉めて、「…うん」とだけ返事をした。



