なんでこんなに、弱いんだろう。

…もっともっと、強くならなきゃ。

強がりだっていい、今このときだけの、ごまかしだったとしても。

それでも、いい。


彼がいなくても笑うことのできる私になったと、彼に伝えなきゃいけない。


だから、だから。


『いくらでも泣けばいいじゃん。ただその後、ちゃんと前さえ向ければ』


トモくんの、強い声が耳に残ってる。

…うん。

そうだよね、泣いたって、いいんだよね。

ちゃんとそのあと、向き合うことができれば。


私はその場から動かずに、その人をまっすぐに見つめて、口を開いた。


「こ…ん、ばんは」


声が少し、震えてしまったかもしれない。

彼はもちろん、お母さんも驚いたように振り返る。

私は気恥ずかしくなって、「…じゃあっ」と言うと階段を駆け上がった。