…だから、引っ張って欲しかった。
私なんかとは比べ物にならないほど強い彼女に、慎ちゃんを捕まえて欲しかった。
…でもやっぱり、上手くはいかない。
「………もっと強く、なれたらいのになぁ」
何があっても泣かずに、彼の前で笑えていたら。
もう心配いらないよって、言えたら。
どんなに、幸せだろう。
「……なぁ、利乃ちゃん」
トモくんが立ち上がって、私へ手を差し出す。
その手をとって立ち上がると、彼は思い切り伸びをした。
そして、ドカッとさっきと同じ席に座る。
私はその後ろの席へ、座った。
私を優しい瞳で見つめてくるトモくんの横顔は、ふ、と笑って。
「…『強い人』って、泣かない人じゃないんだよ」
射抜くような視線をして、そう言った。
驚いて何も言えなくなる私に構わず、トモくんは窓の外の空を見つめて、目を細める。
そして、静かに目を閉じた。



