「私っ、慎ちゃんと離れるって決めたの!だから泣いちゃだめ、強くなるの…!」
トモくんが辛そうに、私を見つめる。
…そんな目、しないで。
甘えてしまいたく、なるよ。
「……利乃ちゃんは、なんで慎也と離れたいの?」
上を向くと、トモくんの顔が見える。
その向こうに、真っ青な空が見えて、苦しくなった。
「……私がいると、慎ちゃんがダメになる。…私が慎ちゃんを、ダメにする」
私の言葉に、トモくんは眉を下げる。
…トモくんだって、気づいていたでしょう。
中学の頃、慎ちゃんのそばで、いちばん近くで私達を見てた。
私達が、ただの仲の良い幼馴染じゃなかったこと。
……知って、いるでしょう。
「慎ちゃんを東京へ行かせたのは、私なの」
中学を卒業する、数ヶ月前。
慎ちゃんのご両親が、離婚することになって。
ついていくことになった父親は、単身赴任で東京へ行くという。
ついてこいと言われた慎ちゃんは、迷っていた。
ただでさえ、仕事ばかりで家を空けることが多かった父親。
迷わないはずが、ない。



