その部屋の壁に寄りかかり、息をする私。
…慎ちゃんは、青ざめていた。
おかしくなってしまった私の背中を、慎ちゃんは瞳に涙を浮かべながらさすってくれた。
…ねえ、ごめんね。
弱い私で、ごめんね。
「…強く、なりたいのに…っ」
なれない自分が、情けない。
離れるって、決めた。
彼がいなくても笑うことのできる、私になるんだって。
…決め、たのに。
トモくんは、眉を寄せて私を見つめていた。
「…利乃ちゃんは、強いよ。誰よりもみんなのこと考えてんの、わかる」
…ズルいよ。
トモくんのほうがずっとずっと、周りのことを見ているくせに。
だって、壊したくない。
麗奈ちゃんがいつも一緒にいてくれて、トモくんが面白そうに笑いながら、声をかけてくる。
…そして、帰ってきた彼と心の底から、笑い合うことができる。
やっと手に入れた、この幸せすぎる日常を。
どうやったって私は、壊すわけにはいかないんだ。
大切なひとが私の周りで笑っていてくれる、この日常を。
…私なんかのワガママで、壊したく、ない。



