「…でもさぁ、利乃ちゃん。隠したくても、心は限界なんじゃねえの」
トモくんがまっすぐに、私の心の奥を覗き込んでくる。
知られたくない、私の本当の気持ちを暴きにくる。
………やだ。
やだ、やだ、やだ…!
「違う!」
掴まれた手首を振りほどき、「違う」と叫ぶ。
全然、限界なんかじゃない。
私は、平気。
泣かなくったって、彼がいなくたって、平気。
大丈夫だもの、私は強いから。
いつだって笑って、いられるもの。
ぐいっと手の甲で、目元を拭う。
少しだけ濡れているそれが、悔しくて。
唇を噛む私に、トモくんは「逃げんな」と厳しい声で言った。
「慎也からも自分からも!俺からも麗奈ちゃんからも逃げてさぁ。嘘ばっかで、利乃ちゃんの本音はどこ行ったんだよ!」
……だっ、て。
私の本音なんか、知らなくていい。
こんなワガママ、誰にも知られずに、消えてしまえばいい。
トモくんに掴まれた腕が、痛いはずもないのに痛む。
…離してよ。
私を弱く、させないで。



