慎也は、じっとあたしを見ていた。
そして、あたしと同じ、照れたようにはにかんで。
「……いいよ。帰ろっか」
なんて、優しい言葉をくれた。
嬉しさで飛び上がりそうになるのを、必死に抑える。
「…ほっ、ほんと!?」
「うん」
「うわぁ、ありがと!!」
「ハハ。麗奈、大げさ。あ、お昼どっかで食べて帰る?」
「えっ…うん!」
お昼ご飯、一緒に食べれるんだ。
頑張って誘ってみて、よかった。
神様、ありがとう…!
急いで鞄を持って、教室を出ようとする慎也の後を追う。
見上げれば、すぐ近くで笑う慎也がいて。
今まで、あたしにあの切ない笑みしか見せてくれなかったから。
その瞳にはいつだって、利乃がいたから。
今、確かに彼の隣にいるのは自分なんだと。
……そう思えるのが、すごく幸せだと思った。
*
しん、と。
誰もいなくなった教室は、静まり返っていた。



