【元気でいますか】


そんな手紙の一行すら書けなくて、

出せずにいた便箋がたまっていく日々。


【暑い夏が来ましたね】

【寒い日が続きますが、ご自愛下さい】


時候の挨拶を書いただけの一行。

出せない手紙と降り積もる想いが、

私を日々狂わせていきます。


木々が生い茂る夏を越えて、君のいない時間は過ぎていくけれど。

君がいなければ泣くこともできない私の心は、

ますますあの夏の日を恋しくさせました。


【君は笑顔でいれていますか】

【寂しくはありませんか】


もしかしたら君はもう、

私以外の誰かの手を繋いでいるのかもしれません。

君が帰ってきた時に、


どうか笑顔で、おかえりと言える私であれるよう。


泣かなくったって、

君がいなくたって、

強くあれる私になれるよう、日々笑顔の練習を重ねています。


次の夏には、君がいなくても笑うことができる。

そんな私で、あれますように。

あの頃にふたりで見上げた、満点の星空に願いをかけて。



【私の、大切な人へ】



今でも、大好きです。







「おかげさまで滝本利乃、元気いっぱいでーすっ!」


翌朝。

利乃はいつも通りの明るい笑顔で、学校へ来た。