【元気でいますか】
そんな手紙の一行すら書けなくて、
出せずにいた便箋がたまっていく日々。
【暑い夏が来ましたね】
【寒い日が続きますが、ご自愛下さい】
時候の挨拶を書いただけの一行。
出せない手紙と降り積もる想いが、
私を日々狂わせていきます。
木々が生い茂る夏を越えて、君のいない時間は過ぎていくけれど。
君がいなければ泣くこともできない私の心は、
ますますあの夏の日を恋しくさせました。
【君は笑顔でいれていますか】
【寂しくはありませんか】
もしかしたら君はもう、
私以外の誰かの手を繋いでいるのかもしれません。
君が帰ってきた時に、
どうか笑顔で、おかえりと言える私であれるよう。
泣かなくったって、
君がいなくたって、
強くあれる私になれるよう、日々笑顔の練習を重ねています。
次の夏には、君がいなくても笑うことができる。
そんな私で、あれますように。
あの頃にふたりで見上げた、満点の星空に願いをかけて。
【私の、大切な人へ】
今でも、大好きです。
*
「おかげさまで滝本利乃、元気いっぱいでーすっ!」
翌朝。
利乃はいつも通りの明るい笑顔で、学校へ来た。