「うん。…それが誰なのかも、知ってる」
ヒュウ、と。
あたしとトモの間に、夏の風が吹く。
それは爽やかで、少しだけ乾いた風だった。
トモはあたしを驚いた瞳で見ていたけど、すぐにニカっと笑った。
「そっかぁ。…よかった」
…きっと、この『よかった』は。
あたしが利乃のことを、慎也が原因で嫌いにならなくてよかった、って意味、だろうな。
…だって。
あたしだって、利乃のこと、好きだから。
誰より努力していて、外見だけじゃなく中身も、ずっとずっと魅力的だって、知ってるから。
…嫌いなるわけ、ないんだ。
「…フラれて、当たり前だよね。利乃に勝てるわけないもん、あたし」
こんな、可もなく不可もない、平々凡々なあたしなんて。
そう言ってへラリと笑うけど、トモはまっすぐにあたしを見て、「なんで?」と言った。
「なんでって…あたし、全然可愛くないし」
「可愛いよ」
まるで、当たり前だと言わんばかりに。
トモはあたしを見つめて、言った。



