「おはよ、利乃」
夏休みの補習は、一週間ある。
八月の中旬に、連日昼まで。
なんで夏休みなのに、学校に来て勉強しなきゃいけないのか。
面倒なこと、この上ないんだけど。
今日は、二日目。
あたしは教室に着くと、何故か不機嫌な顔をして席についている利乃へ声をかけた。
「……おはよぉ」
利乃は、頬を膨らませたまま。
「なに、どしたの」
自分の机の上に、荷物を置く。
利乃は少しの間黙ってたけど、やがて「ちょっと聞いてよぉ、麗奈ちゃん」と言ってきた。
「聞く聞く。どしたの…」
ーーガラ。
利乃の席の前へ立ったとき、慎也とトモが教室へ入ってきた。
ドキッとして、思わず目を逸らす。
...慎也の好きな人を知った、昨日。
結局、あのあとなんとか平静を装って教室へ戻ったんだけど。
職員室に用事があるらしくて、慎也が一緒に帰ることにならなかったのが幸運だった。
利乃が不機嫌な顔をしながらも、いつも通りに「慎ちゃんとトモくん、おはよー」と声をかけた。
「お、ふたりともオハヨー」
トモがニコニコと笑って、利乃の頭をパシンと叩く。
「いった!なにすんの!?」
「可愛い顔が台無しになってるから」
「私はいつも可愛いですぅー!」
ぎゃいぎゃいと言い合いを始めた利乃とトモを黙って見ていると、苦笑いしながら慎也が隣に歩いてきた。