まだ外も薄暗い午前四時、ふと目が覚めた。

見慣れた天井を、ぼうっとして見つめる。

私はまた目を閉じて、ふぅ、と息をついた。


……なつかしい、夢を見た。


慎ちゃんと夜の海で、最初の『約束』をする夢。

今でも鮮明に覚えてる、彼の言葉、表情、海の景色、音。

すべて、私を支えていてくれたもの。


「…………」


まだ眠たい目をこすりながら、ベッドから起き上がる。

部屋の角に置いてある、白のカラーボックスを見つめた。

二段目に置かれた薄いピンク色の箱を開けて、中から小さなケースを取り出す。

ケースの中に入っているのは、あのブレスレット。

シャラリと小さな音がする、その金色のチェーンを掲げた。

まだ腕へ通したことのないそれへ、そっとキスを落とす。

頭の奥で離れない、彼のあの言葉を思い出して、唇を噛んだ。


『利乃ちゃんが泣きたいときに、そばにいてあげる』


…優しい、ことば。

きっとこの世界で、誰よりも何よりも優しい音がする、ことばだった。


「……慎ちゃん」


私だけに許された、私だけの呼び方。

彼と私をつなぐ、大切な響き。

ブレスレットを見つめて、私は目を細めた。