利乃はそれに気づいているのか、ニコニコとお得意の愛想を振りまく。
俺は何をやらかすのか、気が気じゃなかった。
『はじめまして、栗原利乃です！リエちゃんとよく遊んでるんですけど、お母さんにまだ、ごあいさつしてなかったなって』
後藤リエが、目を見開く。
無邪気に、礼儀正しい『いい子』の利乃が、愛らしく笑う。
周囲の視線を、一身に集めていた。
『リエちゃん、わたしにとっても優しくしてくれるから、大好きです。これからも、よろしくおねがいしますっ』
ぺこりと利乃が頭を下げたとき、もう後藤リエの母親は、顔をしかめてはいなかった。
我が子を褒められ、嬉しそうに『あらあら』と笑っている。
『こちらこそ、リエと仲良くしてくれてありがとう。わざわざ挨拶しに来てくれるなんて。リエ、利乃ちゃんと仲良くするのよ？』
母親にそう言われ、後藤リエは悔しそうに唇を噛んで、利乃を見つめている。
利乃は『だって、リエちゃん！』なんて言って、笑っていた。
その様子を見つめている周りの児童は、驚き。
お水の母親の子供という目線で利乃を見ていた保護者たちは、その一件から利乃を悪くは言わなくなった。
