褒められて嬉しそうにはにかむ子供の達の中で、俺は利乃と一緒にいた。
利乃の母親は、仕事で来れなかった。
…俺の母親も、来ていない。
とても、来れるような状態じゃなかったから。
利乃は何も言わずに、窓の外を見ている。
俺は何も言わず、それに付き添うように、窓際に立っていた。
すると、教室の扉の近くで、甲高い女の子の声がした。
『ママぁ!見た?あたし、発表したよ!』
その子のお母さんが、えらかったね、と褒める。
…後藤リエ。
利乃をいじめる、リーダー格の子だ。
発言力はあるけど、口は悪い。
利乃は窓の外から目を離し、その様子を眺めていたけど、やがて席を立った。
そして、無言で後藤リエと母親のもとへ歩いていく。
驚いて後ろ姿を見送ることしかできない俺は、利乃の行動に驚いた。
『あっ、リエちゃんのお母さんですか!?』
そう、母親へ嬉しそうに言ったのだ。
面食らう、後藤リエ。
その母親も、利乃が例の母親の子供だと気づいたのか、顔をしかめた。



