「………もぉ、やだぁ……」 彼が長い間、ずっと片想いをしている相手。 そんなの、ひとりしかいないじゃん。 彼が転校して来た日、真っ先に声をかけたのは利乃だった。 彼があの寂しい笑顔をするときは、決まって利乃がいないときだった。 ……ああ。思い出せば、たくさんあるじゃない。 彼の言葉にはいつだって、彼女の存在があったこと。 …気づいてしまった。 慎也の好きな人は…利乃、なんだ。