「でも、やっぱり無理だった」
へら、と笑う。
慎ちゃんは眉を寄せて、「…そっか」と言った。
「…うん。ごめんね」
「……いいよ」
夜風が、慎ちゃんの黒髪を揺らす。
暑さでかいた汗が、冷やされていくのを感じた。
…寂しい寂しい、夏の夜。
私の家のガレージにも、慎ちゃんの家のガレージにも、車は一台も止まっていない。
…カレンダーをめくれば、もう八月だ。
夏の夜の匂いが、私をあの頃へかえす。
冷たい潮風が、私の頬を撫でた。
*
夏祭りから、数日後。
登校日があって、あたしたちは約二週間ぶりに四人で揃った。
「あっ、麗奈ちゃん!久しぶりー!」
「…そんなに久々でもないけど」
教室へ入るなり、利乃が抱きついてくる。
利乃とは、夏祭りのあとも一度会って遊んだし。
…けど。
いつも通り、教室の後ろの壁に寄りかかってしゃべっているふたりを見て、どきりとした。



