『………ごめん』
わかっていたはずの言葉なのに、なんでこんなにきついんだろ。
告白して後悔なんか、してない。
けど、自分で思っていた以上にあたしは、泣くのをこらえていたみたいで。
彼の瞳に確かに『あたし』が映ったこと、彼の頭の中を埋め尽くしたこと。
思い出せばどんどん涙がこらえきれなくって、やがてこぼれた。
……今まで失恋したことはあるけど、こんなに苦しいのは始めてだった。
なんだか今日は、初めてのことばっかりだ。
知りたくなかったなんて、思わない。
…思わない、から。
電車の中、窓の外を見つめながら声を押し殺して泣く。
どうか今も彼の心の中に、『あたし』が残っていますように。
*
「『親戚の子』って、どこにいんの」
ーーカララ…
隣のベランダの窓が、そんな声と共に開く。
家のベランダから花火を見ていた私は、そっちへ見向きもせずに「さぁ、どこでしょーね」なんて笑った。
色の無くした夜空は、やけに寂しい。
わずかにちらほらと見える星を見つめながら、「お祭り、どうだったの」と言った。
「慎ちゃん」
微笑を浮かべて、隣のベランダの手すりに腕を置く彼を見つめる。
夜空を見つめていた慎ちゃんは、いつもより少しだけ厳しい目で、私を見返してきた。



