花火が終わると、あたしたちは屋台のある通りへ戻った。
家族へか、慎也は『おみあげ』と言ってりんご飴を買った。
さっきまでのことがまるでなかったかのように、いつも通り笑い合う。
けど慎也の頭の片隅には、あたしの告白が残っているようだった。
だからやっぱり、あたしは何も言えなくて。
「じゃあ、慎也。今日はありがと、またね」
「…ん。また」
駅のホームで、手を振り合う。
穏やかに微笑むその姿は変わらないけど、あたしを見つめる瞳が優しくて、喉が痛くなった。
彼の後ろ姿が遠くなっていくのを見て、目を細める。
祭りの影響で臨時の電車が来ていたから、待たずに乗ることができた。
ひとりぼっちになった途端、どうしようもないほど視界が歪んでいく。
浴衣姿の女の子と、それに連れそう男の人の姿を見て、今日のあたしたちはああ見えていたんだろうかと思った。



