「………うん。俺こそ、ありがとう。…ほんと、ありがとう」
本当にあたしのことを考えて、言ってくれてるのがわかる。
夜空には、フィナーレのたくさんの花火が打ち上げられ始めた。
「…あ!最後だよ、ほら慎也!」
あたしのせいで重たい空気になっちゃったから、せめて明るく振舞わないと。
「……うん」
同じように花火を見上げる彼の瞳には、確かにあたしが映っていた。
それを見て、あたしの決意は揺らいでいく。
…言えないな、と思った。
『あきらめないから』なんて、言えない。
今だけ、このときだけでいいから。
慎也の頭の中を、独占していたいと思った。
『あきらめない』なんて言ったら、きっとまた彼は好きな人のことを思い出す。
…ずるいかも、しれないけど。
それでも。
今この人の隣にいるのは、他でもないあたしだと。
…そう、思いたかったから。
「慎也」
激しいほどの音を立てて打ち上げられる花火の下、慎也を見つめる。
目が合うと、やっぱり優しい声で「…ん?」と首を傾けてくれた。
「……また、みんなで遊ぼうね」
そう言うと、慎也は一瞬驚いた顔をしたあと、嬉しそうにはにかんだ。
「当たり前」
………降り積もる。
切ない思いが、降り積もっていく。
それはいつか、咲かせられるのかな。
夜空の花火のように、あんなにも美しく、咲かせることができるのかな。



