…彼の瞳に映るには、もう告うしかないと思ったから。
今まで通りのあたしじゃ、どうやったって彼の視界には入れない。
その寂しい恋を、黙って見つめているだけの、あたしじゃ。
…だから、言うんだ。
彼を好きなあたしで、その瞳に映りたいから。
慎也は笑うあたしを見て、そして眉を寄せて、目を閉じた。
「………ごめん」
その真剣な声色に、胸の奥がじんじんと痛んでくる。
一言だけなのに、どうしてこんなに苦しく感じるんだろう。
「……うん。…こっち、見て」
あたしの言葉に、長いまつげが上がる。
彼はすごく申し訳なさそうに、あたしを見ていた。
…ほんと優しい、なぁ。
泣きそうに、なるよ。
「ふ、そんな顔しないでよ。フラれるのわかって言ったんだから、慎也はそんな顔しなくていいんだよ」
「……でも」
「いいの」
目を伏せて笑うあたしに、彼の手が伸びる。
けど、頬に触れる直前でそれは、止まった。
…今まで、容易く触れてきたのに。
胸の底が、じくじくと灼かれていく。
それでもあたしは、笑った。
「…大丈夫だから。返事、ありがとう」
…お願い。
あたしの精一杯の強がり、崩さないで。



