慎也はしばらくあたしを見つめていたけど、やがて笑うのをやめて、目を伏せた。
そうして、口を開く。
…彼の、好きな人は。
「……誰よりも弱くて、泣き虫で、不安定」
予想していなかった単語の連続に、少し驚く。
けど、慎也は不意に花火を見上げて、そして目を閉じた。
「……けど、誰よりも前向きに生きようとしてる、女の子」
そう言った慎也の口元は、弧を描いていた。
寂しそうだけど、それでも確かに愛おしそうで。
あたしは唇を噛んで、その姿から目をそらさなかった。
……その、人が。
君は本当に、好きなんだね。
「………そっか」
あたしは俯いて、そう返事をする。
慎也が、あたしへ視線を移した。
…きっと、敵わない。
今のあたしじゃ、彼の好きな人には、到底敵わない。
まだあたしは、この人の視界にすら、映ることができてないんだから。



