「………なん、で?」
あたしたちの上に、花火が降る。
大きな音が、辺りに響き渡る。
あたしは、慎也だけを見ていた。
「……約束したんだ。海に行くときは、ふたりでって」
あたしは、目を見開く。
彼は寂しそうに、諦めたように、…それでいて、穏やかに。
あたしを見つめて、優しく笑っている。
…また、だ。
また、映ってない。
その綺麗な瞳に、あたしは映ってない。
隣にいるのはあたしなのに、あたしだけな、はずなのに。
あたしは慎也の頭の中を、独占できない。
「………どんな、人…?」
声が、震える。
あたしの言葉に、慎也が驚いたように「…え?」と声を漏らした。
「…慎也の、好きな人。…どんな、人……?」
もしかしたら、今度こそ泣きそうなのがバレたかもしれない。
でも、そんなの構ってる余裕、なかった。
この人にこんなにまで悲しい表情をさせるのに、それでも彼のなかから消えないその人が。
どんな人なのか、純粋に知りたいと思ったんだ。



