「……………」
ーードン、ドン。
しばらくの間、ふたりでベンチに座って花火を見上げた。
赤、黄、青、紫。
色んな花火が、あたしたちの頭上に降り、消えていく。
見つめていたらなんだか寂しくなってきて、何か話そうと話題を探した。
「…綺麗、だね。あたしの地元の祭りは海のそばであるから、なんか新鮮」
笑うあたしに、慎也は静かに「そっか」と返事をしてくれる。
その瞳が心なしか曇っている気がして、不安になった。
…なんか、明るい話題。
彼が笑顔になる、話題。
「……あ。そうだ、海!」
大袈裟なほど大きな声で、思いついたように言ってみた。
彼は驚いたように、あたしを見ている。
「みんなで、海行こうよ!夏休みのどっかでさ!」
ねっ!?と笑ったけど、彼の表情は明るくなかった。
困ったように眉を下げて、悲しそうに笑う。
………え?
その反応に、あたしはなにも言えなくなった。
「…海は、好きだけど。…行かない。行けない」
その笑みは、あたしが今日何よりもさせたくなかった表情で。
…好き、だけど。
行くことは、できない…って。



