……たぶん、今。
彼の隣にいれるのは、私だけだ。
*
「やっぱり、ここにいた」
学校でいちばん、空に近い場所。
案の定、そこにトモくんはいた。
「…………え」
突然現れて彼を見下ろす私に、彼は目を見開く。
陰になっている壁際に腰を下ろしたトモくんは、空を見上げていた。
「……利乃ちゃん、なんで」
「忘れ物した」
それだけ言って、隣に腰を下ろす。
屋上に吹く、爽やかな夏の風が、私の長い髪を揺らした。
「……忘れ物、って、なに」
「トモくん」
その答えに、トモくんが押し黙る。
私は、笑わなかった。
笑う必要がないと思ったから、笑わなかった。
ただただ彼とは目を合わせずに、空を見上げていた。
やがて、隣から「ぷっ」という笑い声が聞こえてくる。
くっくっと声を押し殺して喉で笑うトモくんに、私はやっと「…なに」と不機嫌な声を出した。



