青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。



あたしの前に立った彼は、それでも優しく笑っていた。

唇を噛んで眉を寄せるあたしに、「ありがと」と言う。

…笑わないでよ。

いつも笑ってばっかだから、不安になる。

池谷くんはいつ、苦しさを吐き出しているの?


「…小城さんは、まっすぐだよね」


あのときと同じ、そっとあたしの頬に触れる。

その手は、冷たかった。


「…池谷くんは、まっすぐじゃないの…?」


見上げて、合った彼の瞳は、暗かった。

…やっぱり、どこを見てるの。

目の前にいるのはあたしのはずなのに、彼は今、あたしを見てない。


……好きな人のこと、考えてるの?


「俺は、まっすぐじゃないよ」

頬から、彼の手が離れる。

池谷くんは、あたしの視線から逃れるように、目を閉じた。