「……無理に笑ったり、明るくしたりしてないからさ。俺も、素直に笑えるっていうか。小城さんの長所だよ」
……そう言う、池谷くんは。
今、本当に素直に、笑ってる?
何も言えないまま、歩き始めた彼の隣に並んで、歩く。
けど顔を上げることができなくて、彼の顔が見れなくて。
足元ばかりを見ている自分に、ハッとした。
…違う。
こうじゃ、なくて。
ぶつかるって、決めたじゃん。
彼の視界に入るんだって、決めたじゃん。
ぐっと唇を噛むと、あたしは足を止めて、立ち止まった。
池谷くんは、すぐに振り返る。
あたしは顔を上げて、震えそうになる声で、言った。
「…苦しそうに、見える」
あたしたちの間に、大きな木の影が伸びている。
地面が、茜色に染まっていた。



