やっと笑うのをやめた池谷くんは、空を見上げて「なんかね」と言った。
「見てて安心する。小城さん」
……え。
目を見開いたあたしに、池谷くんはふはっと笑った。
「それ、その顔。ほんと、素直な反応するよなぁ」
指を差されて、自分の顔に手を添える。
…なんか、似たようなことをトモにも言われた気がする。
咄嗟のリアクションて、ごまかしようがないと思うんだけど。
首を傾げるあたしに、池谷くんは穏やかに、そしてまた、あの寂しげな笑顔を浮かべた。
「……本当の気持ちがわかるから、安心するんだよ」
…西日の橙が、彼の肌を濃くする。
同時に濃くなった影が、その長いまつげの下に落ちた。



