もう、私は。
「…ホント、毎日楽しいの。あ、このあいだ呼び出し受けたこと言ってるの?あんなの全然、気にならないよ。慣れてるし」
饒舌になる私を、慎ちゃんは黙って見つめている。
…やだよ。
お願いだから、やめてよ。
これ以上、私を弱くするのはやめてよ。
「もう、慎ちゃんに頼らなくても大丈夫だから。ホントに、気にしないで。じゃあね、また明日…」
無理矢理話を終わらせて、家の門を開ける。
玄関の扉に手をかけた時、私の足が止まった。
「利乃!」
…慎ちゃんが名前を呼んだら、私は無視できない。
『約束』、だから。
「…泣いてないんだろ、ずっと。俺が、東京行ってから」
俯いていた私は、目を見開く。
バッと顔を上げて、彼を見た。
そこには、変わらず私をまっすぐに見つめる、慎ちゃんがいて。
じわ、と瞳に涙が浮かぶ。
…やだ。
やだ、やだ、やだ!



