そして何も言わずに、私の隣に並ぶ。
黙って彼を見上げる私に、彼はやっぱり無言で。
…ぽん、と、私の頭を撫でた。
「…トモ、くん」
「…………」
その手が優しくて、目を細める。
視線を後ろへ動かすと、私はもう一度「トモくん」と呼んだ。
……ごめんね。
二度目の言葉を、心のなかへ飲み込んで。
麗奈ちゃんと慎ちゃんは、穏やかに笑いあっていた。
*
「じゃあバイバイ、慎ちゃん」
家の前で、いつも通り彼に手を振る。
そしていつも通りの返事をして、彼も隣の家へ帰っていくのだと思っていた、けれど。
今日は、返事が違っていた。
「利乃」
その声に、ずっと笑い続けていた表情が、固まる。
それでも笑おうと必死になりながら、私は「…なに?」と小さく返した。



