「…利乃ちゃん、俺のこと実は嫌いでしょ?」
「まっさかぁ」
ニコニコしながら、トモくんの腕に手を絡める。
嫌そうな顔をする彼が面白くて、私は笑いながらその腕を下に引っ張った。
驚くトモくんの耳元へ、背伸びをして唇を近づける。
そして、小さな声で、囁くように。
「……ごめんね」
トモくんが、目を見開く。
眉を寄せて微笑んだ私に、彼は目を細めた。
…ごめん。
私のわがままに、巻き込んでごめん。
「なーにしてーんの」
立ち止まっていた私達に追いついた麗奈ちゃんが、間延びした声で私の背中を押した。
「えへへ、内緒〜」
そう笑って、トンっ、と明るく階段をおりる。
すると、トモくんも一段飛ばしで階段をおりてきた。



