「麗奈ちゃんまでー!」
「ハイハイ、利乃、叫びすぎ。帰ろ帰ろ」
まるでお母さんみたいに、慎ちゃんが私の背中を押してくる。
それにムッとして見上げると、優しく細められた目とぶつかった。
ドキッとして、慌てて目を逸らす。
……だから、そんな目、しないで。
ちらりと麗奈ちゃんを見てみると、運良く前でトモくんと話しているところだった。
ぎゅ、と手のひらを強く握りしめて、ダメだ、と思う。
早く、早く。
私は、離れなきゃいけないんだ。
「トーモーくん!」
麗奈ちゃんとトモくんの会話が無くなったところを見計らって、彼の背中にダイブした。
「うわっ……重い!」
「はぁー!?女の子になんてこと言うの!」
トントンと、トモくんの背中を押しながら、廊下を歩く。
麗奈ちゃんは「トモ、かわいそー」と笑いながら、後ろで慎ちゃんの横に並んだ。
それを確認して、さりげなくトモくんの横を歩く。
すると、トモくんがちらりと後ろを見て、そして私を見た。



