『その『慎ちゃん』って呼び方、マジでキモいから』
余計なことまで思い出して、怒りがふつふつと湧き上がってくる。
…私と慎ちゃんのこと、何も知らないくせに。
そんな簡単で単純な言葉で、片付けないでよ。
もう痛みは引いたはずなのに、何故だか頬が痛い。
私を苦しそうな瞳で見つめる、慎ちゃんの顔。
口元に触れた彼の指の感触、それを見つめる麗奈ちゃんの表情。
次々に思い出して、私はきつく目を閉じた。
…知らなくていい。
知らなくて、いいの。
私の素直な感情なんて、誰も知らなくて、いい。
*
放課後、麗奈ちゃんが職員室へ課題を出しに行くと言うから、教室で待っていることにした。
「じゃあ、ちょっと待っててね」
「うん」
麗奈ちゃんが教室を出たのを確認して、ふぅ、と息をつく。
すると、教室の扉がガラ、と開けられた。



