青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。



『その『慎ちゃん』って呼び方、マジでキモいから』


余計なことまで思い出して、怒りがふつふつと湧き上がってくる。

…私と慎ちゃんのこと、何も知らないくせに。

そんな簡単で単純な言葉で、片付けないでよ。

もう痛みは引いたはずなのに、何故だか頬が痛い。

私を苦しそうな瞳で見つめる、慎ちゃんの顔。

口元に触れた彼の指の感触、それを見つめる麗奈ちゃんの表情。

次々に思い出して、私はきつく目を閉じた。

…知らなくていい。

知らなくて、いいの。


私の素直な感情なんて、誰も知らなくて、いい。






放課後、麗奈ちゃんが職員室へ課題を出しに行くと言うから、教室で待っていることにした。


「じゃあ、ちょっと待っててね」

「うん」

麗奈ちゃんが教室を出たのを確認して、ふぅ、と息をつく。

すると、教室の扉がガラ、と開けられた。