「だから、ねっ?大丈夫だから。ありがとう、二人とも。ほら、五限目始まるよ。席につきましょう〜」
まだ納得の行かない顔をしている、麗奈ちゃんと慎ちゃんの背中を押す。
そのとき、隣にいたトモくんと目があった。
彼は笑うでもなく心配するでもなく、黙って私を見ている。
その瞳が言おうとしていることがわかって、私はフッと笑った。
…トモくんは、本当に周りをよく見てるよね。
さすが人気者、と思いながら、声には出さずに唇だけを動かす。
『内緒』。
私の返事に、トモくんは眉を寄せて、ハァ、とため息をついた。
そしてやっぱり無言で自分の席へ戻っていくトモくんに、笑う。
みんなが自分の席へついたのを確認して、私も席へついた。
痛みの引いた頬に手を添えて、目を閉じる。
彼女たちの言っていた言葉を、思い出した。
『好きなんでしょ?池谷くんのこと』
…好きだよ。
でも、恋人になりたいだとか、そういうものじゃない。
だけど、何より大切な人。



