「……馬鹿、利乃」
苦しそうに目を細めて、彼は私を見つめた。
その瞳に、胸の奥が、ぎゅう、と痛む。
…ダメ。
心配かけちゃ、ダメ。
そっと慎ちゃんの手に自分の手を添えて、頬から離した。
私の行動に、慎ちゃんが小さく目を見開く。
その目をじっと見つめて、そして私はいつも通りに微笑んだ。
「ほんとに大丈夫だからっ、ねっ?もお、麗奈ちゃんも慎ちゃんも、心配しすぎだよぉ〜」
ねー、とトモくんに話を振ると、彼はちょっと驚いたあと、唇を尖らせて「…そー、だな」と言ってくれた。
その様子が面白くて、ふふっと笑ってしまう。
トモくんはまだ、この前私が横断歩道で、彼の恋路の邪魔をしたことを怒っている。
あのときは本当に、ごめんね。
結局、麗奈ちゃんにフラれてしまったみたいだけど。
邪魔をせざる、を得なかった。
どうしても、麗奈ちゃんが慎ちゃんを好きだと思う、きっかけを作らなきゃいけなかったから。
彼女はまだ、私に慎ちゃんが好きだと打ち明けてはくれないけど。
乙女な麗奈ちゃんは、とてもわかりやすい。
今日様子を見ているだけで、すぐにわかってしまった。



