「保健室行った方がいいんじゃない?口元手当てしてもらおうよ」
「うん。でも今から行くと五限目に間に合わなくなっちゃうし、終わったら行くよ〜」
「そ?あ、あたしも一緒に行くからね。…ハァ、まったく利乃はぁ…」
麗奈ちゃんが、大きくため息をつく。
その様子に目を細めていると、近くから「利乃」と聞き慣れた声がした。
「…なに、その傷」
隣にいたのは、私を見て眉を寄せる慎ちゃんだった。
その横にいたトモくんも、心配そうに私を見ている。
私は手のひらを握りしめて、「ちょっとね」と笑った。
「パシーンっとね。やられちゃったぁ」
そう言うと、慎ちゃんの手が頬へ伸びてきた。
思わずびくりとしそうになって、咄嗟に抑える。
目の前にいる麗奈ちゃんが、私へ伸びてくる腕を見て、表情を変えていく。
……ああ、ダメ。
そう思った時には、慎ちゃんの手は私の口元に添えられてて。



