ずっと実らない恋をしている彼は、それでも『好きでどうしようもない』と言っていた。

そんなにまで、誰かを一途に愛せる彼が。

すごく、眩しかったから。


「……あたしだって、どうしようもない…」


叶わないって、わかってる。

今のあたしじゃ、到底彼の瞳に映ることなんか、できないって。


だからこそ、あたしはぶつかっていきたい。

今まで、何かに対して一生懸命にぶつかっていく人を、あたしは羨ましいと思いながら見ていた。

けどもう、それだけじゃいられないから。


梅雨明けした空に、眩しいほどの太陽が照りつけている。

日の光が窓から差していて、彼の黒髪が茶色に透けていた。

彼が遠くで、笑う。

…縮まらない、この距離を。


どうやって埋めれば、いいんだろう。





「あんたさぁ、池谷くんの何なの?」


教室のある階から離れた場所にある、人通りの少ない空き教室。

そこで私は壁際に追い詰められ、女子達に囲まれていた。