「……だいぶ仕事も終わったし、今日はもう帰るか」

「飛呂、くん………」


姿が明らかになった飛呂くんは、わたしに背を向けたまま帰り支度を始めた。



「……」


さっきの話、もう聞いちゃダメなんだよね。

明るいところでは話すなって飛呂くん言ってたし…。



「飛呂くん」

「あ?」


でも、もっかい聞きたいって思うのは、ダメかな。

もう一回だけでいいから…。
聞かせてくれないかな…。



「…あ、あの…」

「さっきのことは聞かない約束だったよな?」
 
「…!」



背を向けたまま、バッグを肩にからって会議室を出ようとした飛呂くんは、チラリとわたしの方を見て言った。

…そうだね。約束は約束だね。



「…早く帰るぞ」

「ええっ?」

「送る」




…でも、今日。

確かに、わたしたちの時間は、何か音を立てて動き出したんだ。