「…慣れた人間にまで、気を使う必要ってあんの?」

「……え?」


慣れた、人間………ー?


「俺だって、人間関係を円滑にするための対応とかの技は備えてるつもり。でもこれから腹割って話さなきゃならない奴に、遠慮する方がおかしくない?」 


腹割って、話さなきゃならない奴…って…。

それってもしかして、わたしのこと?


「…お前とは、あれじゃん。始業式始まる前から、会ってたし」

「……!」


始業式、始まる前から……って、ことは、あれしかない。

あの、朔ちゃんの家から帰ってくるとき、スポーツバッグをさげた飛呂くんにぶつかった時。


「…覚えて、たんだ………」

「まぁ、一応はね」


ふーん……。

始業式のときは全然平然としていたのに。

ちゃんと、飛呂くんは飛呂くんなりに覚えててくれたんだ。


「…てことで、愛想振りまくのもメンドクセーし、このままでいくわ」

「……どーぞ……」


な、なんか……
全くわたしが掲げていた飛呂くん像と違ってきたぞ……。