ビター・オア・ミルキー




―――放課後。


みんなは部活、または下校の時間。

わたしは朔ちゃんにメールして、教室に残っていた。


朔ちゃんの属するバスケ部は定休日らしく。

『今日は君花とCD見に行きたかったのにー』と返事が来た。


ごめんね朔ちゃん。





「潮田ー」

「……!」


誰もいない教室の入り口から、低い声が聞こえた瞬間。

どきりと、胸に痛みが走る。


「ひ、飛呂くん…!」


思い切り立ち上がると、ガタンと音を立てて椅子が後ろに下がる。

後ろ頭を掻きながら、わたしのそばに寄ってくる飛呂くんは、静かにわたしの向かい側に座った。



名前を呼んだわたしに、なにも反応しない。

ただ、筆箱からペンを取り出して、目の前に座席表を広げて…。


「さっさと終わらせよう。面倒だし」

「う、うん……」


目を伏せて、クラスメートの名前を書き始める。