「潮田」
「ぎゃぁ…っ!」
気が付いた頃には、後ろには噂の飛呂くんが立っていた。
思わず、持っていた卵焼きが箸から落ちる。
「ひ、ひひひ飛呂くん…っ!」
い…いつのまに…。
「…っ」
黒髪の間から見えた綺麗な目が、わたしの方に向けられていた。
じっと見つめる彼の癖に、わたしはまだ慣れない。
「これ、座席表なんだけど」
「…へ…?あ、うん……」
パラり…と、手元に置かれた座席表。
飛呂くんは、わたしが座っている目の前に座った。
意外にも距離が近くて、なぜか緊張。
「今日の下校時刻までに、今の座席と委員会の名簿をつくれって言われてるんだけど。潮田は今日の放課後、暇?」
…飛呂くん…。
思っていたより、声が低いな。
相変わらず無表情だけど…。



