「朔ちゃんの言ってることは、難しすぎてたまによく分かんないよ」

「はははっ!いいよ、分かんなくて。ほら、早く家入れ」


笑いながらわたしの背中を押す朔ちゃんは、優しい顔をしてた。


まだまだ寒い春。

春は、精神不安定になる季節。
魔物が、いるって聞いたことがあった。

だから、たまに寂しくなったりするって。


『本気の恋愛なんて、めんどうだし』


…やっぱり、あの春からだ。
朔ちゃんの寂しそうな顔が垣間見えだしたのは。


「…さ、朔ちゃん…っ」

「ん?どうした?」


朔ちゃんは優しいから。
何も、いわない人なんだよね。


「朔ちゃん、だいすき」


わたし、知ってるよ。


「俺も、だいすき」


朔ちゃんは、春が嫌いだ。

朔ちゃんを

傷つけることが起こるから…。