「君花、もう帰れ。暗くなるし」
さっきの話題から、しばらくして。
窓から外の様子を確認した朔ちゃんは、テレビを消して言った。
「…うん、分かった」
「送って行くから」
女の子が、来るのだろうか。
遅くまでお母さんが帰ってこない朔ちゃんの家は、いつもガランとしていた。
朔ちゃんのお父さんの記憶は、わたしが小学校六年生の時に消えてる。
とても優しいお父さん。
朔ちゃんの両親が離婚すると聞いたのは、六年生の春の参観日が終わって、ママの車で家に帰っていた時だった。
『朔ちゃんの家ね、離婚しちゃうんだって』
ママがあまりにもさらりと言うから、わたしは何のことか分からなかったけど。
でも、なんか悲しくて。
窓に映ったわたしの目からは、涙がこぼれていたのを覚えてる。



