もう冷え切った汗は、夏の生ぬるい風によって跡形もなく消えていた。
サラサラと、黒髪をなびかせる飛呂くんは、広場に着くやいなや、わたしと向き合って、ぎゅっと手を握った。
…温かい、大きな手。
朔ちゃんの手とは、違う。不器用だけど、まっすぐ、しっかりとした手。
今まで、何度この手に助けられてきただろう。
…でも、その手は、いつもよりも弱々しく震えているような気もした。
「…飛呂くん、あのね」
「ん…」
この、少し臆病になっている手を、わたしはちゃんと、救ってあげなきゃいけない。大丈夫だよって、言ってあげなきゃいけない。
…ううん、違う。
言いたいんだ。
「…朔ちゃんからね、好きって言われたの。今までのことも、この間のことも、これからのことも、たくさんたくさん、話したの」
「…ん」
「わたしも、たくさん悩んでたの。朔ちゃんがどんなふうに考えてるか分からなかったし、そのくせに嫌われたくないって思いばっか働いてて。きっと、ものすごくたくさん、飛呂くんを傷つけてきたんだと思う」
「…ん」
ひとつひとつの言葉に、ちゃんと返してくれる飛呂くん。
その優しさに、また少し涙が滲んで来る。
…さっきの朔ちゃんとの話とは違う。
わたしは、この人を幸せにするために今こうやって話をしているのに。



