ーー電車の中でも、飛呂くんはわたしを腕の中におさめたまま、決して離してはくれなかった。
「…飛呂くん…?」
ドキドキする。
やっぱり、この気持ちは、飛呂くんだけに向いているものなんだ。
…そう、実感する。
「…あの、わたし、飛呂くんに話したいことが…」
「いーから。今はこのままでいて。電車降りてからね」
「…」
…やっぱり、ちょっと怒ってる。
当たり前だよね、黙って朔ちゃんに会いにいって、2人きりでいたんだから。
あまり、いい気はしないよね。
「…あの、」
「ん?」
「…」
…飛呂くん、どうしてここにわたしがいるって分かったのかな。
…なんて、聞かないほうがいいかな。
「…飛呂くん、来てくれてありがと」
「…ん」
相変わらず、ぶっきらぼうで、ふてぶてしくて、不器用だよね。
…でも、今は胸を張って言えるよ。
わたしは、飛呂くんのことが、誰よりも大好きなんだって。
朔ちゃんに何をされようと、何を言われようと、この気持ちだけは変わらなかった。
これは、ものすごく大きなことだと思うんだ。
「…汗、かいたな」
「うっ、ごめん、臭いよね」
「いーよ。全然臭くない」
暑いよねって言いながらも、飛呂くんの腕は決して緩まない。
それはきっと飛呂くんの今の気持ちの表れで、この後しっかりと聞いてあげなきゃと思う。
そして、わたしも言うことをちゃんと言わなきゃね。



