「…飛呂」

「…え??」

「雨宮、ひろ」


ひ、ひろ………?

雨宮、飛呂……。



「何か言えよ」

「…あっ、あ、ごめん!よろしくね、雨宮くん」


恥ずかしくなって下を向いた。

まさかこんなに素直に教えてくれるなんて思ってもみなかったから。


「名前聞いといて、苗字呼びか」

「へっ!?」

「あ――もういいから。めんどい」

「え!?」


め、めんどい!?メンドクサイってこと!?!?

わたしが!?



ピン!…と、一度だけ、わたしのおでこに指をあてて、雨宮くんは去って行った。



「…わ………」


…やっぱり、そうだ。

あの時にぶつかったのはきっと、雨宮くんだった。



だって去って行くときにちゃんと、わたしの目を見る癖が

あの時と同じだったから…。