「誰、ゆりちゃんって!そんなやついたっけ?!」
「ええっ!?」
4時前の公園に、朔ちゃんの笑い声が響く。
話を聞いていくと、どうやら、ゆりちゃんではなくて、ゆきちゃんだったそう。
…もう。だって他校の子だったから、よく知らなかったんだもん。
「えー、じゃあゆきちゃんって書いてれば正解だったの?一文字くらい、いいじゃん」
わたしは、朔ちゃんの書いた文字をちらりと見た。
…ふじ組のリョウくん。そう書いてあった。
くそう、合ってる。さすがだ。
「だーめー。しかもそいつ、別に初恋でもなんでもないし。初めての彼女なら、正解にしてやってもよかったけど」
「ええ?!違うの?!どっちにしろ間違い?!」
「ふん、どんまい」
なんだよ。そんなにバカにしなくてもいいでしょって。大体、好きな人とか話してこなかったの、朔ちゃんの方だし。
「朔ちゃんから、そんな初恋の人の話とか、聞いたことない。語れる思い出がないよ」
「…」
そうだね、と、朔ちゃんは空笑い。
日が傾きかけた公園に、いまだわたしたち2人きり。そんな空間に、朔ちゃんの声はよく響いていた。
「…正解、聞きたい?」
「うん、聞いたら思い出すかも」
「…どーかな」
優しく笑ってくれる朔ちゃん。
そんな朔ちゃんは、持っていた枝を、地面にぼとりと落とした。



