走り出してからは、あまり時間はかからなかった。
わたしの中には、変な自信が生まれていて、その場所に行くと朔ちゃんに会えるんだと勝手に確信していて。
「…朔ちゃん………っ」
電車に乗っている間も、昔のことばかり思い出していた。
二駅なんて、電車で行くとたった5分ほど。それなのに走るとあんなに遠くて、すごく離れてしまっていた気がしていた。
駅に着いて周りを見渡す。見たことのある景色だ。
でも、ずっと前の記憶だから、もう場所までは覚えていない。
走って行く自転車や車を見て、少しだけ途方にくれてしまう。
「…アパートも、家も、いっぱい……」
この中から、朔ちゃんのおばあちゃんの家を探す。
…苗字は、加野でいいんだっけ。わからない。
住宅街が広がるこの場所は、家族連れがたくさんで、家もギュウギュウに建っている。
でも、ここまで来たのだから、探すしかない。
ここに朔ちゃんはきっといる。
…きっといるんだ。
近くの住宅街に入って、そのまま1つ1つの表札を見て歩く。
加野…加野でよかったんだっけ。それで大丈夫なの…?
鈴木、寺内、山門、佐伯…。
様々な名前が並んでいる中、たった1つの名字を探す。
でも、簡単には見つからなかった。



