気がつくと、わたしは制服のまま、家を飛び出していた。
そのまままっすぐ、隣の家へ急ぐ。
…もう、ずっと会っていない。朔ちゃんからキスをされたあの日から、わたしは朔ちゃんの本当の気持ちを聞かずに逃げてばかりいた。
「…朔ちゃん」
…飛呂くんと、もう一度話すためにも、わたしは朔ちゃんと、ちゃんと話さなきゃいけないんだ。
…ガチャン。
「…」
玄関は、珍しく閉まっていた。いつも、どんな時だって、夜まで開けっ放しだった不用心な朔ちゃん。
だけど、今日は違っていた。
「…朔ちゃん…?」
もう、学校も部活も終わって、帰ってきてるはずなのに。いつもなら、この時間は必ずいるはずなのに。
…今日は、いない。
お買い物…?ううん、そんなの朔ちゃんがしてるの見たことないし。
お出かけしてるのかな。んー、でも、部活終わった後は家に一直線で夕飯までゴロゴロしなきゃ気が済まない朔ちゃんなのに?
「…」
…うだうだ考えてたって、仕方ないか。
今日のわたしは、アニカと高橋くんから力を注入してもらったからか、変に勇気が湧いてきていて。
気がついたら、ポケットから携帯を取り出していた。