「…君花」
気まずそうにしている高橋くんと、なんて返せばいいのか分からなくなっていたわたしの間に、アニカが入ってくれた。
その声は、相変わらず優しくて。
「…君花、」
「…っ」
ぎゅっと、わたしを抱きしめてくれた。
お互い汗をかいてるくらい暑いはずなのに、わたしの身体はひどく冷えていて、アニカの身体は熱かった。
…アニカは、いつもあったかいね。
「…君花、あのね。うだうだ考えないで、簡単に考えてみたらどうかな」
「…?」
簡単に、考える…?
「…天秤に、かけてみればいいんだよ。君花にとって、どっちが大切か」
「…!」
アニカは、そっとわたしから離れると、いつもとは違う笑顔で、わたしの頰を撫でた。
その顔は、少し何かを考えているような、ずるい女の子のような表情で。
「たいせつな方が、重くなる。1グラムでも違うと傾くの。そうして考えれば、君花にとってどっちが大切か分かるはず」
「…アニカ…?」
「朔ちゃんのこと、飛呂くんのこと大切って、相手のことばかり考えてると、いくら時間を使っても答えは出にくいよ。君花にとって、どっちが大切かを考えればいい」
「…」
…わたしにとって、どっちが大切か…。
より大切な方が、重りで沈む…。
「…少しは、考えやすくなったかな」
「…」
アニカは、わたしの頭をナデナデと優しく撫でてくれた。
さっきまでのずるい笑顔は、もうなくなっていて。
「…ありがと、アニカ…」
「うん!」
…わたしの頭は、なぜか、すっきりとしていた。



