「…聞いた、全部。それでもあいつは泣くから、一回お前と話してこいって言った。全部聞いて、頭を整理して、それでも俺がいいと感じたなら、戻ってきてほしいって…」
…なにを、言ってんだよこいつは。
「…じゃあ、今君花とは…」
「…一旦、付き合うのはやめる」
今度は、俺が襟を掴む番だった。
こんなこと、男相手にしたことなかった。
けんかのひとつも避けてきたなんて、恥ずかしい話なのかもしれない。
だけど、こいつの今の言葉に、俺は強く反応してしまって。
「…なんでそんなこと言った!」
ダンッ、と
壁に大きな体を突きつける音が廊下に響く。
「…お前が、伝えることを伝えていないからだ」
「はぁ?!そんなのどーでもいいだろ!俺の伝えたい時に伝える!」
「それじゃ、きみかはずっとくるしむ」
「だからってなんでお前が決めんだよ?!」
なんで なんで なんで…!
贅沢な話だ。せっかく、君花を手に入れたのに。せっかく、俺から奪って、自分のものにできたのに。
「なんでお前から手を離すんだよ!?」
かっこよくて、優しくて、仕事もスポーツもできて。
俺より背も高くて、大きくて、落ち着いていて。
そんなやつが、君花を…。



